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山縣はまぁええけどと味噌汁をすすった。
朝餉を食べた後,入江は気を落ち着かせたくて屯所を出た。
家事が一段落して三津は出掛けたくて入江を探したけど見当たらない。
「山縣さーん,すみません。町までついて来てもらえませんか?」
「えぇけど入江は?」
「それが何処にも居ないんです。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary
「そうか。じゃあ行くか。高杉も戻らんし,しばらく訓練もない。俺が木戸さん帰るまで存分に相手しちゃる。」
にっと笑う山縣に三津も頼もしいと笑顔を見せた。それから二人で町に出た。
「高杉さん今日は帰って来ますかね?」
「満足したら帰ってくるやろ。嫁ちゃんは昨日入江満足させてやったかー?」
「だっ!だから私と九一さんは,そっそう言うの禁止ですからっ。」
あからさまな動揺を見せたから山縣はげらげら笑った。
「隠さんでええっちゃ。木戸さんには言わんって。何回抱かれた?」
「だからしてませんっ!」
三津は顔を真っ赤にして声を荒げた。
「本当に?入江我慢したそ?」
「我慢……してはって……。でも抑えきれそうもなくて……。」
三津は視線をあちこちに散らしながらしどろもどろに答えた。
「それで?そんな状態の入江放置出来る程嫁ちゃん薄情やないやろ。」
三津は顔を赤くしたまま口を一文字に結んだ。そんな三津に山縣は囁く。時間はたっぷりあるからなと。人には聞かれたくないだろうから少し静かな所へ行こうかと二人は神社に立ち寄って石段に腰掛けた。
「で?何した?ん?まぁ想像はつくぞ?処理はしてやったんやろ?」
「それもアカンのは分かってるんですけど……。放っておけないですよね……。」
「まぁ酷やわな。好きな女がそこにおって互いに気持ちも通じちょるのに手が出せん。」
山縣は俺なら耐えきれなくて他所の女抱くわと言った。それを聞いた三津はある考えが過ぎった。
『やっぱ抑えきれんくてどこか行きはったんやろか……。』
だから屯所に居なかったんだと思った。
「九一さん何でそんな辛い思いしてまで私の傍におるんやろ……。」
「そりゃ嫁ちゃんが好きやからに決まっとるやん。確かに出来んのは苦やと思うで?でも嫁ちゃんから離れるよりはいいんやろ。」
「……何で男の人は好きでもない人抱けるの?」
「それは神様が男は子孫を残す為だけが存在意義みたいに創ったからやない?子を成すのが仕事。やけん極端な話女がおれば本能的に孕まそうと思ってしまう……なんてな。
深く考えてしょぼくれた顔するならこの話は止めよ。ごめんな,せっかく出てきたのに楽しませてやれんと。」
山縣が珍しく弱々しい笑顔をするから三津はそんな事ないと否定した。
「山縣さんとおるの楽しいです!前より楽しい!」
「前は楽しくなかったんかい。」
しれっと失礼な事言いやがるなと苦笑した。でも前よりは仲が深まってると考えれば悪い事ではない。
「そしたら散歩再開しよかね。何か美味いもん食ってくか。」
「食べる!」
あと酒を買って帰ろうと二人はにんまり笑い合って散歩を再開した。
「あー不甲斐ない……宮城さん武人さん,こんなくだらん事で来てごめん。」
入江は長州征伐を勝利した報告に墓参りに来たのだが,頭の中は三津の事でいっぱいでその相談が主だった。
「本当に文ちゃん要らん事ばっか教えとる……。」
昨日三津がしてくれた事を思い出しては身を捩って悶て頭を抱えた。三津の顔を見れば目の前で行われた光景が鮮明に蘇って今朝は全く顔が見られなかった。
“文さんが言うように出来るか分からへんけど……”
そう前置きした三津の表情が色っぽくて堪らなかった。
『何か話すきっかけないと顔が見られん……。』
それに黙って出て来てしまった。お詫びに何か手土産を買って帰ろう。入江は二人にまた来ると手を合わせた。
それから重い足取りで三津へのお土産と会話のネタを探しに向かった。
「高杉さんさっきのヤツ何ですか?」
三津は助けてもらったお礼を言うのも忘れてあれ何?何?と興味津々だった。
「こりゃあ鉄砲じゃ。当たると痛いぞ。」
高杉はにっと笑った。それから赤禰に近寄って肩をぽんぽんと叩いた。
「姉上,赤禰さんすみません。フサが挑発に乗ったから……。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary
しゅんとしてしまったフサの頭を三津は優しく撫でた。
「腹立って煽ってもたの私やから。赤禰さんすみませんでした。」
二人で頭を下げると赤禰は申し訳なさそうに首を振った。
悪い空気は嫌いだ。三津はここで気持ちを切り替えたかった。
「じゃあ行きましょうか。高杉さんも来ますか?お二人居てくれると心強いんで。京でもそうやったけど私が出歩くとしょっちゅう面倒事に巻き込まれるんで申し訳ないんですが一緒に居てもらえると有り難いです。」
「三津さんが俺を頼りにするの初めてやないか?それなら喜んでついてくわ。武人行こうぜ。」
高杉はにっと歯を見せて笑いながら赤禰の背中をバシバシ叩いた。
「痛えわ馬鹿。」
赤禰が口角を上げたのを三津はほっとした顔で見つめた。するとまたバチッと目が合ったから逸らすことも出来ずに瞬きもしないで見つめてしまった。
「そんなに見つめられると流石に照れるんやけど。」
赤禰は気まずそうに後頭部をポリポリ掻いた。三津は頬を赤くして俯きすみませんと謝った。
「んでどこ行くそ?」
高杉は何事もなかったかのように勝手に前を歩き始めた。
「小物を買いたいのです!姉上とお揃いの物が欲しいのです!」
目を輝かせながら高杉に力説するフサを可愛いなぁと三津は後ろから目を細めて眺めた。
「何でお揃いのもん?」
赤禰が不思議そうに三津の顔を覗き混んだ。
「吉田さんが私に下げ緒で作った御守をくれたんです。吉田さんがそれを手首につけてて私は足首に。それを話したら私も欲しいって言うから。」
「へぇー。吉田そんなんしちょったんか。好かれる女は大変やな。」
赤禰に茶化されて三津は苦笑いで頬を掻いた。
「三津さんから見て吉田はどんな男やった?」
「えー……天邪鬼?でも長州から帰って来はった時はだいぶ丸くなってましたね。」
すると赤禰が急に声を押し殺しながら笑いだした。
「そうや。京から戻って来た時に随分不機嫌でな。周りに当たり散らしとったそっちゃ。」
「すみません……それ私のせいです……。吉田さんが京から居なくなる前に喧嘩別れしてたんで。」
間違いなくそれが原因だと三津の顔が青ざめた。まさか自分の知らないところで被害を被ってたなんて。
「喧嘩?何で喧嘩したそ?」
「機嫌悪かった吉田さんにすっごい嫌な事言われたんです。今でも覚えてます。えっと……私の死んだ恋仲の話って酔った時に話してたりします?」
「新ちゃん?」
やっぱりしていたか,なら話は早いなと三津は話を続けた。
「そうです。新ちゃんを引き合いに出して小五郎さんと比べたんです。
死んでもて触れられないけど誰のものにもならへん新ちゃんと触れられるけど他の女の人の所へ行く小五郎さんとどっちがいいのって。」
「あいつそんなん言うたん?そりゃ喧嘩なって当然や……。」
「それで次会ったらちゃんと仲直りしようと思ってたんですけど長州に戻っちゃってて私は敵陣の女中になって……すれ違いでした。次に話せたのは私が捕まって長州藩邸に連れてかれた時でした。」
「ん?ん?それは死にかけた話に出てくる部分?」
三津の身には危険が及び過ぎていてまだ把握しきれていない赤禰の頭の中はこんがらがった。
「出てきますね。その時土方さんの女と間違えられて長州藩邸に連れてかれたんですよ。土方さんは分かります?」
「分かる。三津さん襲った不届きモンや。壬生狼の大将の右腕。」
「私酔ってどれぐらい話してるんですかね?」
三津は三津でみんながどこまで何を知っているか分からなくて頭の中が混乱していた。
握り拳を振り下ろして頭に拳骨をお見舞いした。
「子供やないんやからわがまま言わへんの!まだ子供の方が可愛げありますよ。
帰りたくないのは分かりましたけど自分の言い分だけ通さんとちゃんと周りの話も聞きなさい!返事は!?」
「おっおぅ……。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary
まさか三津に拳骨付きで怒られるとは。面食らって語尾がちょっと弱腰になった。
「あーあ怒られたー。三津怒らしたら一番怖いんだからなー。」
吉田が茶化すように笑うと三津はまたやってしまったと顔を真っ赤にした。
「ごめんなさい!宗太郎に怒る感覚になってましたごめんなさい!」
三津はまた背伸びをして今度は拳骨を落とした場所を撫で始めた。
「くっ!はっはっはっ!それも宗太郎にする感覚?
晋作!お前は齢六,七の子供と同じ扱いだぞ!」
吉田は高杉を馬鹿にして大笑いした。
「いやっ!あのっ!ホンマにごめんなさいっ!失礼しました!ごめんなさい!」
三津は高杉から飛び退いて両手を宙に彷徨わせたまま悪気はないんだとひたすら謝った。
「三津,構わないよ。晋作がすまなかったね。もういいからサヤさん達の所に行ってなさい。あと足袋は履き替えてね。」
笑ったらしょぼくれるから笑わない様にと桂は顔を赤くして耐えた。
三津はあっ……と声を漏らして自分の足元を見た。
「で?お前は一体何してんだ?」
久坂は音も無く高杉に近寄ると右手で左耳を引っ張った。
「いでででででっ!」
詳しく聞かせてもらおうかと二度目の連行を余儀なくされ,また説教が確定した。その夜は散々説教された高杉の為に酒の席が用意された。
理由はどうであれ折角高杉がここまで来たんだし和やかにお話しては?と三津の気遣い。
「ほんっとに晋作は思い立ったら一直線だな。もうちょっと考える頭持ったら?」
「考えちょうわ!そっから決断が早いだけや!」
小馬鹿にしてくる吉田に噛みついて一気に酒を飲み干した。
「三津さん酒!」
お猪口を掲げて乃美の隣に居た三津を呼び寄せた。
「三津,こんな奴は手酌させとけばいいよ。」
「今日はお酌係ですから。」
笑って徳利を傾けた。
「何で稔麿だけ呼び捨てにしとるん。」
桂さんの女やろがと言い終わると同時にお猪口を空にして三津に差し出す。
そんな桂の女を盾にしようとしたのは誰だよ。
「吉田さんは初めて会った時からこうですもん。」
「初めて会った時はまだ桂さんの女じゃなかったからな。俺が長州に戻ってる間に手ぇつけてたんだよ。」
吉田も高杉に負けじとお猪口を空けておかわりを要求する。
「えっでも深い仲になったの今年に入ってからじゃ?」
久坂から疑問を投げかけられた三津は考える様に首を傾げた。
「え?どう言う事?」
吉田はお猪口を宙に浮かせたまま三津と久坂を交互に見た。
「三津さんが拐われて来たあの一件の時,まだ背中を見た事がないって言ってた。
だから桂さんが手を出さずに我慢してるってよっぽどだと思ったから覚えてる。」
「確かによっぽどだ。」
入江も口端を上げて笑った。以前の桂じゃ考えられないと言うのは三津の手前言わないでおいた。
「お前らしか分からん話するなや。
三津さん明日は町見物に付き合え。案内してくれや。」
高杉の誘いを三津以外が盛大に笑い飛ばした。
「無理だ晋作,三津は道が分からない。二人して戻って来られなくなる。」
吉田は体を前後に揺らして笑った。
「は?京の生まれやないんか?」
「それに三津さんは壬生狼の元で女中をしてた。顔も名前も知れ渡っていて危険極まりない。」
俺よりも壬生狼内では有名だと久坂も笑う。
「は?幕府の犬の女中?」
「中でも幹部の奴らがお熱でまだ行方を探してる。」
引く手数多な女は辛いねと入江が茶化す。
「待て待て情報量が多過ぎる。」
『やはり副長は俺の存在を忘れていたな?
まぁいい,俺も修羅場が見たくて本気で沖田を止めなかったし……。
でも最中なら困りものだったがな。』
髪まで乱れた三津と土方を交互に見た。
「あんまり見んとって下さい……。」https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary
三津は消え入りそうな声で呟いた。
目のやり場に困った総司と斎藤が視線を向ける先は,自然と土方になる。
「詳しい事は屯所で伺いますからねっ!!」
「あぁ,こいつが喜ぶ所も敏感な所も存分に語ってやるよ。」
言われっぱなしじゃ気が済まない。
こう言えば総司は真っ赤になって挙動不審になるのは知っている。
「斎藤,三津を甘味屋まで頼んだ。
三津,続きは屯所の俺の部屋だ。」
「だからその言い方っ!!」
誤解を招くんだって言う前に土方は総司を伴って部屋を出た。
「……悪かったな邪魔して。」
「居てたならここに入る前に止めて欲しかったんですけど……。」三津はエラい目に遭ったと口を尖らせて布団に座り込んだ。
「俺には仲睦まじく見えたが?」
「嘘っ!絶対ないっ!!
人の身包み引っ剥がして,馬乗りになって背中の傷眺めたんですよ?
変態にも程があるでしょ。」
それを聞いた斎藤は少し考えてから,三津と向かい合って腰を据えた。
「お前は随分と想われてるんだな。副長はお前を受け入れようとしたんだろう。
ただそれには少々言葉が足りなかったようだ。」
三津は思い切り眉根を寄せた。
馬乗りにされて脱がされて,そんな事した土方の肩を持たれて納得がいかない。
「少々どころか全然足りてないですよ。」
背中をなぞられた感覚がゾワリと蘇った。
粟立った肌をさすりながら,土方にどんな意図があったのか考えてみる。
「一度定めた法度を曲げる訳にはいかないが,お前があれほどにまで反抗する事情ぐらいは受け入れようと考えたんじゃないか?」
斎藤に言われ,三津は屯所での自分の行動を振り返った。
あの一件以来,幹部との会話は必要最低限に留めた。
食事も一緒にとらなくなった。
勝手に土方の隣りから離れた。常識的に考えれば小姓失格。
向き合う事から逃げた。
「お前を知って受け入れる。それが副長に出来る事だったのかもな。」
『まぁ,あわよくば食おうと思ってただろうが。未然に防いでしまったようだ。』
「うぅ,斎藤さーっん!!」
三津は勢い良く抱き付いて,首の後ろに回した手に力を込めた。
「斎藤さんの言葉なら,よぉーく分かりました。
土方さんの回りくどさは前からでしたけど,それならそうとこんな乱暴な事せんたって良かったのに。」
斎藤の肩に顔を埋めて三津は自嘲気味に笑った。
自分も素直じゃない。
あんな態度を取ったのに,嫌われるどころか心配されている事が嬉しいクセに。
「副長もだが分かり難いのはお前もだ。
お前も自分の事は全く話さない。
まぁ聞かれないから話さないのも分かるが。」
甘味屋で世話になってる経緯も,新平との事も,弥一との一件も何かきっかけが出来るまで知る事はなかった。
「話さないと分かってもらえない事もある。
帰ったら距離を取らずもっと会話をしろ。」
コクリと素直に頷いた三津の背中をポンポンと二回叩いた。
「それと……折角だ。料理ぐらい食って帰るぞ。どうせ副長の奢りだ。」土方に盆屋に連れ込まれて,身包み剥がされ,それでも真面目な話をした。
それから総司と斎藤が乱入して色んな誤解が生じて,何だかんだで斎藤と料理をつついた。
入って来た時と違う男と料理を食べて帰るものだから,店の人には物凄く怪訝な顔をしていた。
「絶対私が変な目で見られてましたよね!?」
たちもいる。みなで泣こう。それ以外は、笑っていろ。俊冬のいう通りだ。おまえには、笑顔が似合っている。それに、は「お笑い」、だしな。なあっ、主計?」
「ええ、もちろん。新撰組あらため「チーム・ザ・お笑い」にしてもいいくらいです。ってか、副長。だれか忘れてはいませんか?」
「えっ、そうだったか?」
副長はとぼけた。いま、たしかに野村の名がなかった。
わざとに決まっている。
「俊春、これからは俊冬にかわっておれがおまえを護る。主計、おれには生きる目的ができた。だからもう、死にたいなどとかんがえぬ」
「副長……」
「あいつは、自身のと引き換えに、https://www.easycorp.com.hk/zh/secretary おれのを救ってくれた」
に、揺るぎのない光が宿っているのをみた。
その光を認め、はじめて気がついた。
俊冬が自分の死にこだわったのは、副長を死から物理的に救うというよりかは精神的に救いたかったからではないのか、ということに。
心から生きていたい。死んではならない。死にたくない。
副長にそう思わせるには、かれが生きていては説得力にかけたかもしれない。もちろん、それは俊冬が死にこだわった理由の一つである。実際のところは、もろもろの理由があったのだろう。
おれの推測が正しくても正しくなくても、俊冬の死がおれたちに多大な影響を与えたことにかわりはない。
「ゆえに俊春、おれにすべてを任せろ。をあずけろ。おまえは、これからさき指一本動かす必要はない。すべておれがやるからな」
「いや、ムリムリ」
思わずツッコんでしまった。
これがたとえ俊春を安心させるための方便だとしても、副長の言葉はあらゆる意味で許容範囲をこえてしまっている。
「すみません、副長。ぼくは、そこまで廃人になっているわけではありません。ですが、お気持ちはいただきます」
「俳人?そういえば、副長のド下手くそな辞世の句があるのを忘れていた」
「なんだと、この野郎っ!」
またしても頭にグーパンチを喰らった。
「主計、その俳人じゃないよ。ごめん、いい表現じゃなかった。そこまで落ちぶれていないっていった方がよかったかな?」
ああ、廃人のほうね。
ってか、落ちぶれてないって、そっちもめっちゃ嫌味じゃないか。
「辞世の句は、俊冬がちゃんと認めて副長の写真といっしょに紙に包んで託しているよ。かれは『ウィキに載っている三首とも大盤振る舞いしておいた』っていっていた」
「なんだと?」
「なんだって?」
副長とを見合わせてしまった。
さすがは俊冬である。
がドラマチックかつミュージカルっぽく句を詠んで、それを託そうかっていっていたんだ。だけど、副長の句が急に素晴らしい出来栄えになったらそれこそおかしいだろう?だから、副長のウィキに載っている句にしようってことにしたんだ」
「そりゃそうだ。「梅の花一輪咲いても梅は梅」って、句を超絶馬鹿にしているようなレベルからレベルにでもなってみろ。『じつは、土方歳三は生きている』っていうことよりも、よっぽど驚きだよな」
「お、おまえらなぁ……」
真っ赤なをして激おこプンプン丸状態の副長に、またしてもグーパンチを喰らってしまった。しかも俊冬と俊春の分まで、である。
「チッ!おれが名俳人のお蔭で、おまえらに気をつかわせて悪かったよ」
「迷俳人?」
「謎俳人?」
俊春と同時につぶやいてしまった。でっ、おつぎは右頬に平手打ちを喰らった。しかも、俊春の分もということで左頬にも。
いやいや、ちょっと待ってください。
『めい俳人』の『めい』って、漢字で書かなきゃどんな『めい』かわからないではないか?
それを平手打ちするなどとは、理不尽すぎる。
「でっ、どんな句だ?」
「はい?」
「どんな句かってきいているんだよ」
「ああ、辞世の句のことですか?『よしや身は蝦夷が島辺に朽ちぬとも魂はの君やまもらむ』、それから『たとひ身は蝦夷の島根に朽ちるとも魂は東の君やまもらん』、という句です。この二句が副長の辞世の句とされていたのです。ですが、ある人が『鉾とりて月見るごとにおもふ哉あすはかばねの上に照かと』という句こそが、副長の辞世の句じゃないかって唱えています。副長?」
副長は空を見上げ、嘆息している。
「最高じゃないか、ええ?おれの句、名句すぎて言葉もない。それにしたって、おれも成長したもんだ。詠む暇もなくって練習もしていないっていうのにな。やはり、おれは句の名人だったんだ」
「……」
「……」
「……」
副長のなんの根拠のないその自画自賛に、俊春も相棒も眉間に皺をよせてだまりこくってしまっている。もちろん、おれもである。
「よかったですね、副長」
「さすがですね、副長」
「ウウウウッ」
それから、面倒くさいから
芸が細かすぎる。
副長の切れ長の