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「なんとなく、今あなたに伝えたかった

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「なんとなく、今あなたに伝えたかった

「なんとなく、今あなたに伝えたかっただけです。

私はもしかしたら、今ここにいなかったかもしれない。もしかしたら、どこかで野垂れ死んでいたかもしれない。

でも私は今ここにいる。生きている。

そう思うと、ただ無性に伝えたくなっただけです」

 

 

「そうだな。お前はここにいるし、生きている」

 

 

沖田は川に向かって石を投げた。

水が跳ねる。

それは一瞬だけで、また透明な水はサラサラと流れ出した。

 

 

「普通の人は違うかもしれませんが、それって本当にすごいことなんです。

今この瞬間、生きているっていうのは私には奇跡なんですよね」

 

 

「違わねぇよ。皆、同じだ。ただ、お前みたいに気づかないんだよ。俺らは」

 

相変わらず草を加えてしゃべる土方は、まるで煙管を吹かしているように見える。

 

土方さんにとって煙管は昔から加えてる草と同じなのかもしれないな。

 

沖田は思わず喉を鳴らした。公司秘書服務| 為企業提供可靠專業意見| easyCorp公司易

「それを思うと、美海さんには感謝してもしきれませんね。

少なくとも私はあの人に出会ったお陰で人生が変わった。私以外にも沢山いるんじゃないですか?」

 

 

沖田は左指にハマった指輪を撫でた。

今ごろ美海さん着いたかな?

 

「何が言いたい」

 

 

「美海さんはきっと神様からの贈り物ですね。だって天女のように美しいですから」

 

「ただノロけたいだけなら他でやってくれ」

 

沖田はクスリと笑った。

 

 

「美海さんのお陰で変わったのはあなたもですよ」

 

「俺?」

 

土方は目を見開いた。

沖田は穏やかな表情をしている。そのまま消えてしまいそうだ。

 

「ええ。というより新撰組全体が」

 

 

益々わからないという表情を土方はした。

 

「なんていうかね、私も上手く言葉にできないんです。でもなんだか、優しい雰囲気になったっていうか、明るくなったっていうか」

 

「ここ(新撰組)が?」

 

沖田はコクリと頷いた。

 

 

当たり前の毎日過ぎて意識したことがなかった。

この青年はいつからこのようなことを思い始めていたのだろう。

 

 

昔から明るかったには違いはないが……

 

 

「更にうるさくはなったな」

 

真顔でそう言う土方に沖田は苦笑いした。

「うるさいけど楽しかったでしょ?」

 

そう言ってニヤニヤとする沖田に土方は目を逸らした。

 

 

楽しかった。楽しすぎた。

 

今思い出しても京で過ごしたあの日々は、かけがえのないものだった。

土方のロマンが詰まった舞台だった。

大切な仲間に囲まれていた。

 

 

お互いまた思い出に浸っていたが、再び沖田が口を開いた。

 

 

「いろんな人を斬ってここまできたんですね」

 

 

あぁ」

 

土方は目を瞑っている。

風が冷たすぎて眠くはならない。

ただ、京の寒さとの違いを感じた。

 

 

「私達は周りから見たら、ただの殺人鬼なんでしょうね」

 

 

「あぁ」

 

 

田舎道には人っ子一人通らない。

 

 

「私なんか今まで幾度人を斬ってきたことか。助けを乞うものにも容赦なく制裁を与える私は人間ではないんでしょう」

 

 

土方は目を開いた。

 

こいつの目は相変わらず読めねぇな。

 

沖田の遠い目線を見て思った。

そして一呼吸置いてからはっきりと口を開いた。

 

 

「それでも俺らはそれを誇りに思っている。例え鬼だろうとな」

 

思わず沖田から笑みが溢れた。

 

 

「まぁ鬼の頭領が言うんですから違いありませんね」

 

こいつは

 

土方は青筋を浮かべる。

「でも、その鬼を天女は見捨てないでくれた。ずっと辛い思いをしながらもついてきてくれた」

 

土方は眉を潜めた。

 

 

 

「もうずっと一緒に過ごしてきたんですよ。あなたが拾ってきたんでしょ」

 

沖田はクスクスと笑った。

 

「犬っころみたいに言うな」

 

「まぁあなたが拾って来たのは犬っころなんて生易しいものじゃなかったですけどね。バラガキ歳ちゃんがズタズタにされましたからね」

 

沖田は更に笑う。

土方は沖田を睨み付けた。

こんな時でもその眼光の鋭さは健全だ。

 

 

「なんなんだ天女やら犬っころやら。美海に言ってやれよ」

 

「言いませんよ」

 

沖田は何を思っているのか読めない優しい笑みを浮かべた。

 

 

土方がぼんやりと眺めている間に沖田はスクッと立ち上がった。

土方は顔を上げる。

 

 

「連れていってやってくれ。とは言いません。ただ、あなたが美海さんの立場だったらどうするかを少し考えてみてください」

 

 

「おい!」

 

 

それだけ言うと沖田は口笛を吹きながら行ってしまった。

 

全く。わけがわからん。

 

 

土方はしばらく土手に寝転がったままだった。

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